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当事者もくもく会
FOR 困ってる人

仕事が出来ないの当事者研究

革命的な当事者研究でした(当社比)

セルフネグレクトは脱したけど

2020年3月頃、突然鬱が治りました。本当に謎の回復でした(その話はまた別に書くつもりです)。だからといって全てがスムーズに回復する訳ではありません。風呂も入れるし、外にも出れるけれど、掃除ができない。部屋はセルフネグレクト時のゴミ部屋のまま。それは私が参加していた当事者研究コミュニティーの中で提案され、当会の起源ともなった「Skypeもくもく会」でできるようになりました。その当事者研究会の主催者のTさんやもくもく会を提案してくれたKさんには感謝が絶えません

ここまでは結構スムーズでした。当時はどう頑張ってもできなかった掃除が突然できるようになって驚愕したものです(偉大なり!もくもくの力!!!)。が、しかし、そんなに物事上手く行かないのは世の理であります。日常生活はできても、仕事だけはどうしてもできませんでした。

脳がスイッチオフ

私はもともと本当にしょぼい自営業をやっていて、それを復活させようとしました。やらなきゃいけないことは分かっています。まずはとても単純な作業から。お猿さんでもできる感じのことです。でも、それができません。

そもそも、やろうとすると脳みそがスイッチ・オフします。ぼんやりしてしまって何も考えられない。ひたすらPCの前で文字通りの「茫然自失」をするだけでした。それだけならいいのですが、必ず調子を崩しては寝込み、精神状態は最悪化。「俺の脳は壊れてしまったのだ…」と仕事に挑戦しては悲嘆に暮れることを繰り返していました。

突発Skype当事者研究開催

Tさんの当事者研究コミュニティではSkypeチャットでメンバーが常時つながっており、困ったときにはそこに書き込んで、時には議論が行われたり、緊急のときにはSkypeで当事者研究を行う伝統がありました(当会のフォーマットはTさんの当事者研究会のSkypeコミュニティが元、というか引き継いでいます。私が考えたものではありません)。

どうしようもなくなった私はあまりに困ったので突発Skype当事者研究の開催をお願いしたところ、4人の参加者が集まってくれました。

うつ病マスターS女史

4人が集まった会で私は悩みの相談をしました。
「仕事ができない」
「どうしても出来ない」
「仕事をしようとすると脳がフリーズする」
「どうしたら良いか分からない。辛すぎる」
うつ病にはありがちな悩みですが、とても深刻です永遠のテーマとも言えます。しかし、この普通すぎるテーマの当事者研究で私の悩みは氷解しました。そこにはあのS女史(どの?)がおられたからです。

S女史がどういうお方であられるかと言いますと、要するに高学歴高収入エリートです。ただし、数十年来のうつ病持ちの。しかし、S女史はその優秀なる頭脳で詳細かつ実践的なるうつ病対策マニュアルを編み出し、うつ病と共存してきたお方なのです。そして、ありがたいことに当事者研究の場で、その奥義を伝授してくださったのです。

マスターSのうつ病虎の巻

マスターSを称えるため、妙な文体になっていましたが、あざとい感じがしてきたので、ここからは普通の文に戻します。Sさんによれば、うつ病には回復段階が有るとのこと。

【Sさんによるうつ病回復段階】
その1、日常生活が回る
その2、意識すれば仕事が手につく
その3、意識しなくても仕事に手がつく(仕事が日常の一環として、自然に行えるようになる≒ゴール)

要するに、焦っていた私はまだ「その1」の「日常生活を回せる段階」にいるだけなのに、無理に「その2」の「意識すれば仕事が手につくの段階」にジャンプしようとして、空回りして、毎日毎日ぶっ壊れ続けていたのです。

また、Sさんはこうも付け加えました。
曰く
日常を回せることがものすごく大切。
「出来ることは何?」の積み重ね。
出来ることを出来る範囲でひたすらやる。
出来ていると出来ていないの境界線を探り、しっかり見極める。
無理はしない。そして、出来たことをしっかり見る。
うつの時は出来ないことに目線が行きがち。
これらは、明日に向かうのにとても重要なこと。

(ほぼ当時の当事者研究のホワイトボードのままです)

こう言うと普通な感じもしますが、絶賛空回っていた私にとっては革命的な当事者研究でした。自分の中に他者の視線が入ってきて、自分の見方が明確に、そして鮮やかに変わるということを初めて経験しました

風呂や洗顔、掃除ができることに狂喜していたはずなのに、仕事に挫折したことで出来ていることに目線が行かず、出来ないことだけしか見れないようになっていました。そして、自分に0点の採点を下し、絶望していました。本当は出来ていることも明確に存在するにも関わらず。100点ではないけれど、50点は取れているはずなのに。

このSさんのこの福音指摘でその瞬間から私の心は楽になり、次の日からは行動が変わりました。日常生活(早寝早起き、洗顔、風呂、掃除、筋トレ、サイクリング、散歩、坐禅)を必ず行い、そして、最低限仕事のメモだけは眺める時間を作りました。仕事はやっぱり進まない毎日です。心は曇ります。それでも、日常生活を回し続け、出来ていることに目を向けるようにしました。そして、この当事者研究から3ヶ月後、紆余曲折を経て、ようやく仕事を再開する上での最も単純な作業を行うことができるようになりましたまるでサウロの回心のようですね。

ちなみにSさんの助言には作業リストの細分化という超重要テクニックがあり、最後の最後でこれが決め手になりました。これはこれで超重要なので別に書きたいと思っています。

Tさん当事者研究会

仕事をしようとする度に心がへし折られていた私にとって、これは奇跡のような出来事でした。この奇跡が可能だったのはTさんの当事者研究会のあり方が大きく関係していると思っています。Tさんの会は多様な人々が参加する会です。病の種類もそうですし、社会層としても多様です。それはTさんの包摂性を求める人格の反映だと思っています。また、Tさんは自発性を重んじる信念の持ち主であり、Tさんの会の中で、私がもくもく会やSkype当事者研究会を主催できたことも、その反映です。

日本社会において私は下層民で、本来Sさんのようなセレブとは出会うはずのない人間であります。それらが出会って私にとっての奇跡を引き起こしたのはTさんの人格が当事者研究会に反映されていたからだと考えています。

当会が「弱さを軸に多様な社会層で構成される会」を謳っているのは、弱さを軸にした、階層の垣根を超えた偶然の出会いが偶然的に人を救い、また、社会を少しでも良い方に変えるのではないかと私が思っているからです。

私は自助会というのは主催者の人格の反映だと考えています。Tさんの会がそうであり、そのTさんの会から影響を受けた当会も、私の人格の反映です。いろんな当事者がいろんな自助会の影響を受け、そして、自らも自助会を始め、そういう人格の継承関係が網の目のように広がれば、世の困ってる人々がもうちょっと救われるんじゃないかと思っています。自助会の運営ってのは大変ですが、面白いものでもありますし。

なにはともあれ、SさんとTさんに弥栄ー!!!